街にはさまざまな飲食店が並び、デパートやスーパーには高級食材が売られ、またテレビでグルメ番組を見ない日はありません。お金さえ出せばどんな国の食べ物でも手軽に食べることができる時代です。
今日明日の食事をなんとかするのが精一杯だった戦中戦後の食料不足を思えば、本当に良い時代になりました。

しかし、本当に幸せな時代と言えるでしょうか。
現在わが国では、様々な「食」に対する問題や不安も発生しております。

個人単位の問題としては

○食生活の急激な変化による、栄養バランスの崩壊。
→淡泊な伝統的日本食が減り、濃厚な外国料理や、インスタント食品利用の増加がした結果。

○自炊の減少と、食事の簡便化や外部化の進展。
→みな忙しく、調理や食事の時間を充分にとれない。冷凍食品やレトルト食品で手早く済ませたり、外食や弁当などに頼ることが増えた。サプリメントだけですませる人もいる。都会の住居には台所設備がほとんど無い場合もある。

○朝食をとらない、決まった時間に食事を摂ることができない等の、食習慣の乱れ。
→社会の多様化により、体のリズムよりもスケジュールを優先しなくてはならない場面が増えた。収入減により食費を削らざるを得ない。

これらの問題によって、生活習慣病をはじめとする様々な健康被害が発生しています。
そして単なる肉体的な問題のみならず、例えば家族そろって食卓を囲むことが難しくなった今、心の病も増えています。
物質的には飢えることがなくなった現代の食生活ですが、どうしたことか「満たされない心の渇き」は逆に増大しているのではないでしょうか。

 

また国単位レベルで食の問題をみると、その一例として
1996年に公共広告機構が「食料資源キャンペーン」という運動を行いました。
公共広告機構のCM

残飯を食べて太った猫が大きくポスターに描かれ、
「輸入してまで食べ残す。不思議な国、ニッポン」の文字。
日本では食料の半分以上を海外から輸入し、そのあげく年間約2000万トンもの食品ゴミを出し、しかもその中の1割ほどは、まだ食べることができる手つかずの食品です。
世界では一日約4万人の子供が飢餓で亡くなっているというのに、わが国はこんな状況で本当に良いのでしょうか。

こうした状況を反省し、最近多くの運動が起こっております。
食事を見直し、ゆっくりと楽しもうとする「スローフード」運動
環境保護と健康な生活を優先させる持続可能なライフスタイルである「ロハス」
そして、生涯を通じた健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等を目的とし、食について正しく学習しようとする「食育」が国の政策として進められています。

そして、長い歴史の中で先人たちが工夫し、努力を重ねて創り出されてきた「精進料理のこころ」にこそ、今私たちが学ぶべき多くの点があるのです。

当サイトをご覧になって、「食」に対する問題を真剣に考える人が少しでも増え、道元禅師が説いた「精進料理のこころ」を実践される人が増えることを切に願います。

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