はじめての精進料理

『はじめての精進料理』
~基礎から学ぶ野菜の料理

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東京書籍株式会社
2013年6月25日刊行
オールカラー112ページ
著者 高梨尚之
撮影 今清水隆宏氏
ブックデザイン 高橋良氏
スタイリング 肱岡香子氏
編集 山本浩史氏
DTP 川端俊弘氏
プリンティングディレクター 栗原哲朗氏
定価 1575円(消費税込)

精進料理の人気がかつてないほど高まっている昨今。

 その理由の第一はやはり「健康」でしょう。野菜の持つ自然な力は人間の健康維持に欠かせません。そこに多くの方が気づきはじめているのです。

 そして第二には「手作り」することの大切さです。便利な出来合い食品や外食ばかりに頼っていいのだろうかという反動が起きているように感じます。

 さらに第三には「心の満足」を求める流れでしょう。お金を出せばいくらでも高級で希少なグルメ料理が口にできる現代ですが、いくら高価な料理を食べてもなんだか満たされない、というむなしさを感じた方は少なくないでしょう。なぜ今ひとつ満たされないのか、そうした料理と心の問題を、精進料理の教えに求める方が増えています。
 また近年世界的な課題となっている食品の大量廃棄問題等も、食材の命を尊び無駄を出さない精進料理の教えに学ぶべきだと考える方が増えているようです。

 このように精進料理への期待が高まっているのは確かなのですが、ではその教えを求める方々へ、正しい精進料理の教えが伝わっているかというと残念ながら疑問が残ります。

 たとえば、首をかしげたくなるような内容の精進料理書籍や雑誌などの記事、ウェブページを目にすることがあります。確かに肉や魚を使わず、野菜だけで調理しているのですが、でもこれは「精進料理」ではなく「野菜料理」なのでは?、と。

 ブームに乗って、安易な知識だけで「精進料理」の名前を使う発信者が増えたことは誠に残念です。
 私の精進料理教室に参加した方で、「今まで精進料理を誤解していました」と感想を述べる方が少なくありません。

 本書は「本物の精進料理を」を合い言葉にして制作され、著者が大本山永平寺での修行を終えて15年の節目となる年に、長年暖めてきた企画がようやく実現しました。
 是非精進料理の本物の素晴らしさを実感してください。

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 はじめに
本書の構成
○基本編 プロセス写真付き詳細解説40品
○実践編 精進料理レシピ20品
○応用編 もてなしの一汁三菜お膳レシピ
       胡麻豆腐に挑戦しよう

○精進料理の基本技術をまとめた9つの 「基本ノート」
1 だしのとり方
2 野菜の切り方
3 包丁の研ぎ方
4 野菜の下処理
5 味つけの基本と調味料
6 盛りつけの基本
7 揃えたい道具
8 計量の基本
9 お膳組みの基本

○精進料理の心に触れる6つのコラム
1 精進料理とは
2 典座教訓とエコロジーの実践
3 禅寺の台所修行
4 台所の整頓と衛生
5 三心
6 お仏前をお供えしよう

あとがき

 

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本書は既刊の精進料理書籍とは一線を画し、まずは精進料理の調理法を初歩の初歩からじっくりていねいに学んでいただくことを骨子としています。
 そして各料理の手順を非常に詳しく記載し、また文章だけではわかりにくい箇所には写真も添付しました。
 いわゆるよくあるプロセス写真付きの解説ですが、通常の書籍ではまず書かないような、料理をある程度知っていれば略されるようなことまで今回は書きました。

 というのも、当方の精進料理教室に参加する方を見ていると、精進料理に興味はあるけれどもまったくはじめて料理をするので何もわからない、市販の基本料理本を買ってみたけれど全くの初心者は置いてきぼりのようで、今ひとつ手順がわからない、という声をよく聞きます。実際修行道場に入門し、調理係に配属される修行僧の中には、いままで自分でまるごとの野菜を触ったことがない者がたくさんいました。
 そうした本当にはじめて精進料理をする人に、「ハイしょうゆ大さじ一杯です」といっても、大さじ1って何なのか、しょうゆは薄口しょうゆと淡口しょうゆと濃口しょうゆとどれですか、というところから説明しなければ料理にならないのです。

 それは今までの経験でよくわかっています。
 ですから本書ではまったくの料理初心者でも安心して取り組めるように構成しました。

 ではある程度の料理経験者にとってはうっとうしいかと思うとそんなことはありません。
 意外と基本を間違えて覚えている中級者は多いものです。一度基本をしっかり復習するのに最適です。

 精進料理の深い教えを理解するには、いくら机上の知識だけを追い求めても不充分で、やはり実際に自分で作って実践してみることが一番の近道です。

 禅の修行道場では、うわべの理屈や知識はいったん棚上げし、まずは形や作法をしっかり身につけ、繰り返し行うことを優先します。
 これによりまずは形から入って、徐々に心が練り上がっていくのです。
 本書では「精進料理の心」については最低限の記述のみに抑え、「形」「実践」面に特化した構成とし、
修行道場に伝わる伝統精進料理の基本献立を、家庭で忠実に再現できることを目指した構成を実現しました。

 精進料理に興味が無い方でも、野菜をおいしく調理して食卓に健康的な一品を添えたい方や、料理の基本を一から学びたい方に最適です。

○本書をお薦めしたい方 (本書のカバーより転載)

・精進料理を基礎から学びたい方
・健康的な野菜の料理を食卓に加えたい方
・料理好きだがなぜか上手に作れない方
・最近オーバーカロリー気味の方
・これから一人暮らしをはじめる方
・食を通じて感謝のこころを学びたい方
・野菜の美味しい調理法を知りたい方
・僧侶やお檀家さん、寺院関係者の方
・マクロビや自然食が気になる方
・栄養バランスの良い食事を求める方
・伝統和食の基礎基本を大切にしたい方
・禅や仏教の世界に興味がある方

○内緒の一言(ブログより)
 先述の通り、本書は「本物を伝えよう」を合い言葉に制作されました。
 それこそ立派なテーマですが、言葉で言うのは簡単でも実行するのは非常に大変で、本書の作業は今までの中で最もつらいものでした。

 制作期間は約半年、パソコンで打ち込んだ文字数は主なところだけでざっと8万3千文字。
 もちろん内容は異なりますが、単純比較して大学の卒業論文が400字詰め原稿用紙で100枚書いたので約4万字ですから今回は卒論の倍以上の文字数を執筆したことになります。
料理撮影も、通常の倍くらいの時間がかかりました。それもそのはず、普通は仕上がり写真だけを撮るわけですが今回は料理プロセスカットが必要で、これがまた時間も材料も倍以上かかります。撮影期間中は夜中3時の真っ暗な中起床して準備を行い、朝8時くらいから夕方6時くらいまで撮影を続け、片付けと翌日の準備を夜9時過ぎまで続けるというそりゃあもう脚が棒になるような過酷な撮影期間も今はもう良い想い出です。

 当然ながらその後の編集やら校正やらも何倍もの時間と手間がかかり、もちろん私だけでなく今回の書籍に関わったすべての方々がみな大変な作業に耐えてようやく完成したのです。 

 正直いって、これだけの食材費や人的労力を正直に価格に反映したら、おそらく定価3000円くらいにはなってしまうと思います。
 市販の類書をみても、プロセス写真が豊富な専門書は5千円とか7千円の定価もざらです。

 しかし今回はとにかく「本物を」多くの方に届けるという主旨のもと、そうした原価やコストは考えず、入手しやすい価格をまずはじめに設定して制作が開始されました。
 正直いってこの値段でこの内容は、もう次は無理だと思います。
 まあ何を言いたいかといえば、本書ははっきり言って非常に「お買い得」だと言うことです。

 関わったスタッフの方全てが本書の主旨に賛同し、利益抜きで頑張ってくださった集大成が本書です。
是非皆の熱意を手に取って確かめていただきたいと思います。 

 

 

 

『はじめての精進料理』の発刊を記念して
特別精進料理教室が開催されました

平成25年6月24日、伝統とホンモノの素晴らしさを実体験していただくには最高の会場である京都の包丁・料理道具の老舗 「有次」さまの厨房を特別にお借りすることができました。

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おかげさまで盛会裡に閉会を迎えることができ、ご参加下さった皆様、また快く会場をお貸し下さった有次さまに篤く感謝申し上げます。ありがとうございました。

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今回は初夏の一汁三菜精進料理膳を作りました。これが完成写真です。

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老若男女みなで協力して調理を進めます。まずは胡麻豆腐をこねます。

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はじめはゆるい胡麻豆腐も練るうちにだんだん濃度が高まり、特に後半は大変な労力が必要です。お寺では一人の修行僧が最後まで汗だくでこねますが、今回は参加者が5分程度で交替しながら胡麻豆腐こねを体験しました。

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こねた胡麻豆腐を皆で手分けして整形します。

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中盤以降は参加者がお互いに打ち解けてスムーズに協力しながら進みました。

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会場主である有次の寺久保社長と料理教室担当の及川さん。色々とお世話になりました。

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恐れ多くもミシュランの名店、祇園「たに本」の料理長さんにもご参加いただきました。
 谷本氏は『酒肴の技』(柴田書店) など一流和食料理人向けの専門書の御著者です。
そんな超一流の料理人さんにご参加いただき本当にありがたく思います。

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『京都おかず菜時記 五感食楽』の御著者、小平泰子氏もご参加くださいました


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できあがった料理は曹洞宗の食事作法に則り、食前のお経を皆でお唱えしていただきました。

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後に版元の東京書籍さんから参加者全員に新刊書『はじめての精進料理』のプレゼントがあり、手に取って笑顔で記念写真撮影。後日参加者全員に発送させていただきました。
 最も遠くからお越し下さった方は東京から!他にも大阪や神戸など、遠路からもお越し下さった方、また皆様色々とお気遣いご配慮くださり本当に本当にありがとうございました。

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京都新聞さまの取材が入り、大きく扱って下さいました。
お忙しい中、丁寧な御取材に深く感謝申し上げます。

 今回の料理教室、そもそもの開催主旨は「ほんものの良さに触れる」がテーマでした。

 今の時代、100円でも包丁を買うことができます。値段で決めつけるわけではありませんが、あまりにも安価な包丁はその場限りの使用ならまだしも日常継続して使うのは無理があります。
 ただ、もし安価な包丁しか使ったことがなければ、使いにくさや不便さにも気づくことはできないでしょう。
 贅沢品や嗜好品ならともかく、包丁は毎日の料理に欠かせない日常の道具です。その性能次第で料理の仕上がりが大きく変わります。
切れ味の悪さを我慢しながら使い、1年ごとに買い換えるならば、良い包丁を数十年使い続ける方が良いと私は思います。

 京都の有次さんは、江戸時代から続く刃物・料理道具の老舗です。おそらく今のデフレ時代、高価な包丁が勢いよく売れるとは思えないため色々と大変な面もあるのだろうと思いますが、さまざまな企業努力により本物の良さを求め続けておられる姿勢に頭が下がります。
 私も長く愛用していますが、そうした「本物の良さ」つながりで今回の発刊記念精進料理教室の会場としてご縁を結ばせていただいたのです。

 新刊書『はじめての精進料理』のあとがきで少し触れていますが、現在の精進料理業界でも似たような状況があります
一般社会のみなさんの目に良く触れる精進料理の記事やレシピは、精進料理を現代的にアレンジしたものか、または商業的な都合が多く含まれる飲食店や料亭、葬儀法事のあと席で出されるお膳などが9割以上だと感じています。
 
 もちろんそうした精進料理を否定するつもりはなく、それぞれ意義深いのですが、肝心の「本来の精進料理」があまりにも表に出ていなすぎる、と思うのです。
 なにが「本来」なのかといえば、それは修行道場で750年前から伝わる、僧侶自らが教えに則って調理し、日々お寺で食べている精進料理でしょう。
 そうした精進料理は、商売気もなく、無用な派手さや飾り気がないため、メディアなどのウケが悪いため、一般の方の認知度が低いのも無理はありません。
 しかし、そうした「ホンモノ」の良さを多くの方にしってもらいたい、という主旨で、今回の「はじめての精進料理」は企画制作されました。

 一見ながめただけでは地味な印象があると思いますが、実際作って継続的に味わっていく中で、その本当の良さが必ず伝わることでしょう。

 「ホンモノの良さに触れる」有次さんの厨房で精進料理教室を開催することで、さらにそのありがたさと大切さを確認することができました。

 

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