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新生姜の甘酢漬_地味な料理こそ重要

修行中、典座老師(料理長)が作る精進料理の味に少しでも近づこうと一生懸命頑張りました。


あれこれ努力して一から十までそっくり真似てみた成果が出て、三年目の夏にはようやくいくつかの得意料理ではかなり似た味が出せるようになった(ような気がしていた)のですが、どうにも納得がいかない点がありました。

それは煮物一品だけとか、味噌汁だけならある程度似た味にできても、複数の料理をまとめて食べるとやはり老師の料理とは格段の差なのです。
通常、料理は単品だけでお出しすることはまずなくて、複数の料理を一つの献立として出すわけですから、いくら単品で納得いく味に調理することができても、献立全体として食べたときの味が今ひとつでは意味がありません。

そりゃあまあ一修行僧が、精進料理の達人である典座老師の味をそう簡単にまねることができるわけないのですが、どうしてなのかその理由がわからずずっと不思議に思っていました。

今となってはその理由もだいたいわかってきました。
その理由の一つは、初心者のうちはその献立の中心となるメインの料理ばかりに目がいきがちです。しかし実は漬物など一見軽んじられがちな、いわばサブメニューをいかに大切にするかが、献立全体のバランスを大きく変えるのです。
それぞれの料理が互いを引き立て合い、調和するところに典座老師の味の秘密の一つがあったのだと今では納得しています。

思い返して見ると典座老師は、メイン料理に添える漬物のように地味なものほど大切にし、入念に手をかけていました。そもそも精進料理では主役とか脇役とかそう区別すること自体が間違いで、献立の全てがどれも欠かせない大切な存在なのです。
もう少し広くみれば料理だけでなく、シチュエーションや空気など、食べる周辺まで含めたすべてが料理の味にかかわってきます。

…てなことで今回はいわゆるメインディッシュではない料理、新生姜の甘酢漬けです。
いわゆるお寿司に添えてある「ガリ」ですね。
お寿司のガリは、魚の生臭みを和らげたり、お寿司を続けて食べる際に味の単調さを解消してアクセントを付けるために有効です。コストダウンのため、今はほとんどが量産されたパックガリですが、やはりこの時期に出回る旬の新生姜を使って手作りしたガリは風味も食感も段違いです。

暑さで疲れがちな夏、この新生姜の甘酢漬けを常備しておき、さっと小鉢に盛って出せば時間がない時の酢の物の代わりにもなりますし、ほどよい甘酸っぱさが食欲を刺激してご飯もすすみます。
脂っこい料理に添えると箸休めとしても適しています。

あまりわざわざ手作りしないような料理ですが、精進料理には欠かせない夏の銘品です。


初夏~夏に出回る新生姜を使います。いわゆる普通にみかける皮が少し茶色くて厚い生姜は秋口に収穫されたものを保存して通年店頭に並んでいるものです。


新生姜500gを薄切りにします。新鮮なものなら皮はむかなくても良いのですが薄く切るのが苦手な人は食感が重くなってしまうのでむいたほうがいいかもしれません。
薄切りにする際、繊維を断つように(輪切りのように)切るのと、生姜を寝かせて縦に繊維に沿って切るのとでは仕上がりの食感が変わります。
はじめて作るなら柔らかく繊細に仕上がる、繊維に沿って切る方をお薦めします。
なお先端の赤い部分を取り除かずに同じく薄切りにすると仕上がりがほんのり赤くなります。
今回は赤い部分は取り除いて作りました。

切った生姜を鍋で煮ます。
煮ると辛味成分が流出するため、どのくらい長く煮るかによって仕上がりの味が変わります。あまり長く煮ると生姜の風味が無くなってしまうので途中で少し食べて味見をしながら煮ます。


頃合いを見て流水で冷やします。このときにも辛味が流れ出るのでその分も考えます。
まあそれほど簡単に辛味がなくなるわけではないのであまり気にしすぎる必要はありません。


別の鍋で甘酢漬け汁を作ります。
醸造酢2カップ、砂糖150~200g、塩大さじ1を弱火で加熱し、沸騰しないようにして砂糖と塩が溶けるようにかき混ぜます。
上記分量は2~3ヶ月保存する場合の分量で、家庭で少量作るときなど、それほど長く保存しない場合は酒大さじ2、みりん大さじ1,蜂蜜大さじ3を加えると良いでしょう。
なお甘味は好みに応じて増減させてください。

この漬け汁にひたして3日ほどおいて味をなじませます。涼しい調理場なら常温でも大丈夫ですが、少量の場合や都市部のマンションなどなら冷蔵庫に入れておきます。

なお大量に作る場合は、漬け汁を3/2倍多く作り、まずはちょうどひたるぐらいに漬け、2日ほどしたら漬け汁を取り替えます。これは最初の漬け汁には生姜から余計な水分が出て漬け汁が薄まってしまい、味が薄くなるのと同時に保存性が低くなってしまうからです。少量の場合は、そこまで気にしなくても大丈夫です。

こうした一見地味な料理の重要性に気が付いたら、料理の腕が格段に上がると思います。

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